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光ちゃんもうすっかり少年。

これは・・もしや・・

tokei午前10時半
ママは、ほんの少しだけ寝た・・・しかし、何かがおかしい・・
『痛い??』
何となく、お腹が痛い気がする・・・
『ほほ~!これが、うわさに聞いた陣痛では?』と、気がついた。
『な~んだ。こんなもんなのか・・私ってやっぱり、痛みには強いのねえ~。(いつまでも、浅はかな奴だ・・)』なんて思っていた。

『そうだ~。陣痛が来たら、何分おきか見なきゃいけないんだったね』
ママは思った。
『あ・・でも、時計忘れたんだ・・お隣さんの時計を見なきゃ・・』と思ったが・・もう1つ、忘れ物に気がついた。
『めがね忘れた・・・』ママは普段めがねなんてかけないんだけど、実はかなりの近視だった・・お隣さんの窓際に置いてある小さな時計なんて、見えるはずが無い。

『参ったなあ・・パパに電話して持ってきてもらわなきゃなあ』

・・・。なんて余裕をかましていたのは・・この一時だけだった。

tokei午前11時
『うーーーー。痛い・・!』ママは急激に痛みが増してきた気がした。
やっと垣間見たお隣さんの時計は11時だ・・パパが来るまで1時間有る。
痛みが来ると、体を丸めて唸っていた・・冷や汗まで出てきた。
『うーーーー・・うーーー・・・』

赤ちゃんの面会から戻って来ていたお隣さんは、ママのこの唸り声に気がついた。
『あら?痛いの?先生か看護婦さんに知らせましょうか?』ママはあまりの痛みで返事も出来ない。
『う・・・はい・・』これだけしか言えなかった。
彼女は何も言わずに出て行ってしまった。
『ああ・・・行ってしまった。聞こえたかなあ・・』

『誰か英語が話せる看護婦さん居ます?』外で声が聞こえた。
『あれって、私の事言ってくれている?』ママはそれだけを期待して、ひたすら体を丸めて唸っていた。

『どうですかあ~?』看護婦さんが来た。(英語じゃない・・)
『痛い・・』ママはなんとかそれだけ言った。
『あら?陣痛かしら?チョット待っていてね。先生を呼んできますね♪』
『あったりまえだろう!陣痛に決まっているだろう!下痢しているわけじゃ無いんだから!』そんな事を思っていたママは、まだ余裕だったのだ。

『じゃあ、見ましょうねえ~。あら!もう2センチ開いてきたわね~じゃあ、待機室に移りましょうね。ご主人には電話した?』と、助産婦さんはママに聞いた。
(出来るはず無いだろう・・気がついたらこんなになっているんだもん。)
『していません・・でも、12時には来るって言っていました』
この時は、誰かが気がついてくれた安心感で、痛みはそうでも無くなっていた。(勿論。痛いのよ・・)

『じゃあ、待機室は^%$@${PO:に有るから・・トイレは自分で歩いてここでしてから来て下さいね』と、看護婦さんは言って、さっさと消えてしまった。
『え?なんだって?どこに待機室があるって?ドイツ語分からないんだって~。ま・・どうにかなるか・・トイレか・・もう歩いて良いのか。じゃ・・行くか・・あ!しまった!!
そう・・ここで、またもや忘れ物に気がついた。
スリッパが無い・・・。勿論、靴も無い・・

困ったなあ・・トイレは良いとしても、廊下もはだしじゃ格好悪いな。
と、ママが思っていたら。さっきの助産婦さんが覗きに来てくれた。
『どうしました?』ママに聞いた。
『今朝救急車で来たもので・・靴はおろかスリッパも忘れてきちゃって・・』と言ったら。
『ははは。そうよねえ~。救急車で来たのなら、靴は無いわね。チョット待っていて。』と言って、去っていった。
『あ!スリッパが有るのか~。』と、ママはホッとした。

『ははは・・ごめんなさいねえ・・こんな格好悪いのしか無いのよ・・でも、無いよりはマシよね?』と言って、持って来てくれた代物は、お医者さんが手術の時か何かで使うのか?塩化ビニールみたいな物で出来ている使い捨てのスリッパを持ってきて組み立ててくれた。
(スリッパを組み立てるって・・分からないでしょ?簡単に説明しますと、良く高級のリンゴなんかが包まれている薄手のビニール有りますね?あの切れ目を伸ばすと、提灯みたいになるやつ・・まさにあれです。ますます、分からないか・・)

『・・・。まあ仕方が無いな・・無いよりはマシだもんな』ママはその高級リンゴのカバーのスリッパを履いて、トイレを済ませて・・
『さて行くか~』と思った時に、いつものように触れた所に、お腹が無い!
『お!!確実にお腹が下がっている・・』ママは自分のお腹を見て驚いた。
破水で水が少なくなったのも有るんだろうけれど、お腹の中でも、勝手に確実に、出る準備をしているらしい・・。

待っていてくれた助産婦さんに付いて待機室に行く。
ドアを2箇所ほど開けたり閉めたりしながら、新生児室を通り過ぎ、たどり着いた。
『これじゃ、完全に分からなかっただろう・・1人だったらたどり着かなかったな・・廊下の途中で出産にならなくて良かった。(そんな簡単には生まれないって・・)』ママは、心の中でそう思った。

『じゃあ、ボチボチ調べますか?ここに寝転がって下さいね』ってな感じで、看護婦さんは言った。
『こんな平たい硬いベットに寝転がるって言ってもなあ、第一、痛くて寝られたもんじゃないのになあ。どっち向きに寝るんですか?』
と、一応看護婦さんに聞いた。
『どっちでも、貴方の楽な方向で良いですよ』と看護婦さんは言った。
『じゃ、右下だ・・』ママは右下にして、平たいベットに転がった。

お腹にペタペタと赤ちゃんの心音を聞くのや陣痛の波が分かる機械を貼る。

『え?ええ??あなた!もう、こんなに間隔が狭まっているじゃない!ご主人には連絡した?』今まで、のんびりしていた看護婦さんは、ビックリした。
『していません・・でも、もうすぐ来る頃ですからあ・・』ママはハッキリ言って、看護婦さんの反応にビックリした。
そんなに、驚くほどの間隔だった?じゃ、もう産まれる?(生まれないって・・・)

めがねが無いので、時計を見るに四苦八苦していた間に。
そう・・知らないうちに陣痛は5分間隔になっていたのだ。(鈍いって)

『今、ご主人に電話したら、もう下の、駐車場に来ているから、安心してくださいね』と、助産婦さんは言ってくれた。

『はい・・』と言いながらも、(リンゴのパンは忘れていないだろうか・・)と思っていた。


《あなたじゃ、無いっての!》に続く・・・


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